2016年、沖縄の離島に行きました。
旅行最後の夜は石垣島で野草料理を供するお店で晩餐(ばんさん)です。
店の名は「森の賢者」。なかなか味のあるネーミングでしょ。
石垣島の名物と言えば、石垣牛。
高級牛として知られている石垣牛を使った焼肉やステーキのお店が市内に数軒あります。
特に有名焼肉店某では、去年訪れて、かなり大判振る舞いの食事をしました。
でもって、その結果、翌日は腹を壊してトイレに駆け込むこと数回。
やはり、ふだん食べ付けない、いいものを食べると、体が拒絶反応を起こすのですね。
ほかに、マグロが有名です。
「ひとし」というマグロ料理のお店は漁船の船長が経営するので、新鮮で良質なマグロを安価で提供する店として、なかなか予約が取れないことでも知られています。
この店に何回か予約の電話をかけてみたけれど、繫がりませんでした。
明日は飛行機に乗って帰るので、あまりお腹に障りがあるものだと、トイレに行きたくなったら大変だと思い、野草料理のお店にしました。
結論から書くと、この「森の賢者」に行って正解でした。
お通しの「ゆし豆腐」には海ぶどうがトッピングされていました。

最初に注文した下の写真のおひたしが最高でした。

旬の島野菜のおひたし(500円)
水前寺菜と長命草とごま菜を混ぜ合わせたもので、さっぱりとした中に緑のエキスがギュッと詰まった風合いは、旅の疲れを忘れさせてくれます。
この一品だけで、この店のレベルがわかりました。

二品目は「牛筋煮込み」こちらは、ありきたりの味で、まずまず水準級。

三品目が「自家製スーチカー」(650円)「スーチカー」とは、沖縄の伝統料理
で、「スー」=「塩」、「チカー」=「漬ける」という意味の豚肉の塩漬け。
豚の三枚肉(バラ肉)をたっぷりの塩でじっくり漬けて作ります。
最後に食べたのが、「島素材の天ぷら盛り合せ」(700円)。

記憶を辿って書いてみるとアダンの芽、オオタニワタリ、カボチャ、ゴーヤ、アーサなどです。
アダンとは、下に写真を掲げましたが、パイナップルのような実の成るタコノキ科の植物でマングローブ林に混ざって生えているのを見かけました。

美味しそうですが、食べる人はいません。
島の人は柔らかい芽を天ぷらにして食べる、ということを先日バスガイドさんから聞き、興味を持っていました。
食べる機会に恵まれてラッキーでした。
料理写真では、左のまん中の白いものがアダンの芽です。
柔らかいタケノコのような食感で、実際、何も聞かされずに食べたら、タケノコと思うでしょう。

オオタニワタリは上の写真のバナナのように葉が放射状に大きく開いた植物で、シダの仲間です。

写真のように、でっかいワラビ状の部分を今回、てんぷらにしていただきました。
料理写真の右、ピーマンのような断面をしている細長いものです。
アーサは海藻の「あおさ」のことで、沖縄の家庭では、スープの具などに使う一般的な食材です。
非常に風味豊かで、てんぷらにしても海の香りを損なうことなく楽しめます。
この「島素材の天ぷら盛り合せ」は、店主がそのへんで採ってきた、と言われるくらい、石垣島ではどこにでもある、ありふれた食材ですが、私の住む東京では
まずお目にかかることのない貴重な食材で、珍しいばかりではなく、味や風味もしっかりとした料理でした。
お酒を飲まなかったせいもありますが、ハーブティー2杯と合わせて、〆て3000円でおつりがきました。
石垣島最後の夜にふさわしい、印象に残る料理の数々に大満足でした。
都会では、特にいまの若い人は野草を食べなくなった。
私の母の世代は、春になるとわらびやぜんまい、ふき、ふきのとう、たらの芽、うど、野蒜(のびる)、せりなどの野草を摘んできて、おひたしやてんぷらなどにして食べたものです。
こうした野草の知識やあく抜きなどの野草料理の技術だんだん失われてゆくのは、とても残念でもったいないことだな、という感想をもちました。
これから、ちょうど野草や山菜が出る季節です。
郊外に出かけて山菜摘みでもしてみようかな。
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