小池百合子都知事が、17日、NHK全国学校音楽コンクール・小学校の部で4年連続金賞を受賞した東京・日野市立七生緑小の合唱団のこどもたちの訪問を受け、合唱曲を披露された。
歌声を聞いたあと、都知事は感極まって涙を流したという。
サンケイスポーツのニュースより。
一生懸命、けなげに歌う子どもたちの姿に、ふだんの激務の疲れが癒され、心打たれたのだろうが、その合唱曲の歌詞が、トンデないシロモノだ。
「未確認飛行物体」という詩で、詩人の入沢康夫の作品だ。
実は、私は大学時代に、ゼミでこの入沢先生に習ったことがある。
氏は宮沢賢治の研究者でもある方で、「銀河鉄道の夜」の作品の成り立ちについて研究成果をあげられている。
賢治の代表作、「銀河鉄道の夜」は、実は未定稿で、賢治が発表する前に死去したことから、確定稿(賢治が最後にこれでよし、と決断した原稿)が存在しない。 実は、「銀河鉄道の夜」には4種類の原稿があり、出版社や文庫本によってそれぞれ微妙に内容が異なる。 賢治の赤が入った「銀河鉄道の夜」の原稿用紙のコピーを見比べながら、各々の「銀河鉄道の夜」のパラレルワールドを覗き、賢治の思索の流れを辿るという、なかなかスリリングな授業だった。
賢治を敬愛する私としては、垂涎の内容で、まことに楽しいゼミの時間を過ごした思い出がある。
さて、その肝心の詩を以下に紹介する。
難解な詩を書く詩人、入沢康夫の作品にしては、わかりやすい内容になっている。
それにしても、こんな詩で、ふつう泣くか?

未確認飛行物体 入沢康夫
(1931~)
薬罐(やかん)だって
空を飛ばないとはかぎらない。
水のいっぱい入った薬罐が
夜ごと、こっそり台所をぬけ出し、
町の上を、
心もち身をかしげて、一生けんめいに飛んで行く。
天の河の下、渡りの雁の列の下、
人工衛星の弧の下を、
息せき切って、飛んで、飛んで、
(でももちろん、そんなに早かないんだ)
そのあげく、
砂漠のまん中に一輪咲いた淋しい花、
大好きなその白い花に、
水をみんなやって戻って来る
――『春の散歩』 1982年・青土社刊 より――
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